今回は私がこれまで開業の相談に対応してきた経験の中で感じてきたことを述べていきたいと思います。一個人としての主観も入りますが、これからお店を開業される方には是非知っておいていただきたい内容になりますので最後までお読みいただければ幸いです。
近年、飲食店が選ばれる理由は大きく様変わりしました。一昔前であればお客や従業員に対して一歩も引かない豪快な名物店主が現場を取り仕切っているような強気のお店でも経営は成り立っていましたが、今ではそういったお店もすっかり少なくなりました。人の価値観が変わったという言葉で片づけてしまうのは寂しい気もしますが、多くのお店が顧客中心主義の元に成り立っているのが今の飲食業界の実状と言えるでしょう。
飲食店経営は人との関わりなくして成り立たないビジネスです。すなわち開業する際には経営者としての人柄が問われることを認識しておく必要があります。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 飲食店開業に向けて準備・検討している方
- 飲食店開業に向けてこれから多くの人と関わる方
- 飲食店開業に向けてアルバイトを雇用したいと考えている方
飲食店経営において何よりも大切なこと
私は飲食店経営において何よりも求められるものは「経営者の人柄」だと考えています。それは、どれだけ料理のスキルがあっても、どれだけすごい創業計画書を作り上げられたとしても、ビジネスが成功するか失敗するかは経営者の人柄にかかっているといっても過言ではないからです。
特に小規模の飲食店ほど人との関わりによってビジネスが成り立つ要素は強くなります。そのため対人関係が原因でお店の運営に綻びが生じてしまうことも珍しくありません。顧客との関係性の悪化により途端に客足が落ちるケースをはじめ、急にアルバイトが辞めてしまい営業そのものが立ち行かなくなるケースなども往々にしてあります。人柄は簡単に変えられるものではありませんが、常にお店に関わる全ての人々と良好な関係を築くことを意識することは経営者に求められるスキルの一つと言えるでしょう。
以下は飲食店経営者に求められる人柄や対人関係についての大切なポイントです。
敵を作らないことが鉄則
LINEやX(旧Twitter)などのSNSが普及した現代では一個人の主張を不特定多数へ簡単に発信できる環境が整っています。あのお店(経営者)と関わって嫌な思いをしたという情報はいとも簡単に拡散されてしまいます。
以前開業をお手伝いした店の経営者は、開業間もない頃に客前で不慣れなアルバイトの方を叱ったことを見ていた顧客によってSNSで拡散され、大きなショックを受けていました。日頃からの行いと言ってしまえばそれまでですが、経営者は常に人から見られていることを意識しなければならないということです。
これは来店客だけに限ったことではありません。店舗スタッフをはじめ、仕入先などの取引業者の方、今後お世話になる金融機関や役所などの方、経営に関わる全ての人々が未来の顧客となり得ることも意識しておく必要があります。いくら仕事上での守秘義務があるといっても各々の感情を抑制することはできません。つまり身近な方でも反感を持たれれば敵になり得るということです。そのため、飲食店を経営するうえで敵を作らないことは鉄則と言えるでしょう。
3対33の法則(参考)
ビジネスシーンで使われる法則に「3対33の法則」というものがあります。これは良い噂話は周りの3人に広まるとすれば、悪い噂話はその10倍以上の33人に広がるという考えです。つまり、悪い噂は、良い噂の10倍広まりやすいということです。
ローカルな地域ではマーケットそのものが小さいため、必然的に一人の顧客を失った時のダメージが大きくなります。対人関係により来店してもらえる可能性のある顧客を失うことは避けなければなりません。自身の人柄がお店の経営に色濃く反映されることを認識しましょう。
挨拶は飲食店の基本
近年は若年層を中心に顧客と一定の距離間を保つドライな接客を好む傾向が高まっているとも言われていますが、それでも接客は競合店との差別化における重要なポイントの一つであることは変わりません。接客はホールスタッフの仕事だと割り切るという考え方もありますが、経営者自らが率先して来店時の挨拶やお帰りの時に感謝の言葉を伝えることでお店の印象はガラッと変わります。そして繁盛しているお店の多くではこの基本が徹底されています。
応援したいと思われる人を目指す
これまで開業を志す様々なタイプの方と接してきましたが、結局のところ、応援したいと思わせた人の勝ちだということです。この人は信頼できそうだ、この人のためなら頑張ろう、この人のお店なら行ってみたいと思われる人は、必然的に周囲から支えられ、困った時に親身になって相談に乗ってくれる人にも恵まれます。
人材を大切にする
過酷な労働環境というイメージが強い飲食業界では多くのお店が慢性的な人手不足に悩まされており、求人誌に高い広告費を払っても人が集まらないこともざらにあります。時給さえ高くすればアルバイトを確保できるという考え方は捨てましょう。夫婦二人だけで営業するようなお店を除き、アルバイトの確保は開業における重要な課題です。
そしてアルバイトはお店の売上に貢献してくれる貴重な戦力です。笑顔で働いてもらうために何が必要なのかを日々考えて接していくことを意識しましょう。
近年では、SNSを使ったバイトテロが数多く発生しており、飲食店経営者の頭を悩ませています。その内容は、報復行為、内情の暴露、ただ注目を集めたいだけのものなど様々ですが、投稿された際のお店へのダメージは計り知れません。全てを未然に防ぐことは不可能ですが、従業員教育の徹底に加え、採用に一定の基準を設けることは必須と言えるでしょう。そのため採用を検討する際には経営者として相手の人柄を見抜く力も求められます。
勤務先からの円満退社
開業のために勤めている会社(お店)を辞める際には、円満退社が絶対的な条件です。今後お店を展開していくうえで、出来るだけ多くの人と良好な関係を築いておきましょう。世間は広いようで狭く、残した禍根が、いつ、どんなところで災いにつながるかわかりません。
家族の理解(参考)
人柄や対人関係からは話が逸れますが、開業することに対して家族からの理解は必要不可欠です。
開業すると多く場合、今までと生活環境が大きく変わり、ご家族にも大きな影響を及ぼします。収入が減ることも十分考えられる他、家族と過ごす時間が減ることや家事や育児の負荷がパートナーにかかってくることも想定しておかなければなりません。成功している飲食店経営者の多くは、家族からの理解、協力が得られています。
まとめ
この記事では人柄や対人関係の大切さについてお伝えしました。
私は一個人として応援したいと思った人のお店へ食べに行くことはあっても、関わって不快な思いをした人のお店へ食べに行くことは余程の事情がない限りありません。その時点で既に一人の顧客を失ってしまっているのです…それは来店客のみならず、お店の経営に関わる全ての人々にも言えることです。自身の言動や行動によって周りから反感を買うようなことがあれば、それはダメージとして着実に蓄積され、お店の経営に直接反映されていきます。
飲食店経営では敵を作らないということが鉄則であると同時に一人でも多くの人と良好な関係を築くことがなにより大切です。開業の準備を始めた時点で既に経営はスタートしています。一人の経営者として常に人柄を見られているということを意識して「関わる全ての人が笑顔になるお店」を目指しましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。