今回は私が開業の相談を受ける際、常に注意を払って対応にあたっている「飲食店の共同経営」についてお伝えしていきたいと思います。友人や知人などと共同経営という形で飲食店の開業を検討している方には是非知っておいていただきたい内容になりますので最後までお読みいただければ幸いです。
結論から言うと飲食店の共同経営はおすすめできません。理由は後述しますが私の経験上、飲食店の共同経営は9割方が失敗に終わっているからです。失敗した場合の後味が悪いというのも共同経営をおすすめしない理由の一つです。もちろん世の中には共同経営で成功している飲食店もありますが、比率からすればごく少数です。
これから共同経営での開業を目指している方にとっては現実的な話になりますが、なぜ共同経営は避けるべきなのか?をお伝えしていきます。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 飲食店開業に向けて準備・検討している方
- 友人などと共同経営を検討している方
- 共同経営での開業に不安を感じている方
メリットばかりではない共同経営の危険性
飲食店を開業する際、共同経営という選択肢を考える人は少なくありません。資金の負担を分散できる、業務を分担できる、アイデアを出し合える、一人では不安な飲食店経営に気心の知れたパートナーと共に力を合わせて取り組めるということが共同経営における強みと言えるでしょう。確かに共同経営は魅力的に思えますが、果たして本当にメリットばかりなのでしょうか?
実は、共同経営で開業した多くの飲食店が深刻なトラブルを抱え、最悪の場合は閉店に追い込まれています。本記事では、共同経営のリスクや問題点に焦点を当て、その危険性を考えていきます。
経営方針の不一致
共同経営で最もよくある問題が「経営方針の対立」です。たとえば、一方は高級志向の店にしたいのに、もう一方はカジュアルな雰囲気を望むといったケース。価格設定、メニューの方向性、マーケティング戦略など、細かい部分でも意見が合わず、決定に時間がかかることが多くなります。これにより、経営のスピード感が失われ、競争の激しい飲食業界では致命傷になりかねません。
収益の分配と責任の所在
共同経営では、確実に利益をどう分配するかが問題になります。出資額に応じて分配するのか、それとも労働時間や役割に応じて決めるのか。曖昧なままスタートしてしまうと、後々「自分の方が働いているのに報酬が少ない」といった不満が生じ、関係悪化の原因になります。
また、赤字になった場合の責任の所在も曖昧になりがちです。資金を追加で出さなければならない状況に陥ったとき、一方が負担を拒否すれば、その瞬間に経営が破綻することもあります。
人間関係の悪化
共同経営者とは、単なるビジネスパートナーではなく、毎日の業務を共にする仲間でもあります。しかし、仕事上のストレスや金銭的な問題が絡むことで、関係が急激に悪化することも少なくありません。最初は「信頼できる友人」だったとしても、利益や経営方針の違いによって亀裂が生じ、最終的には敵対関係になってしまうケースも少なくありません。実際に仲たがいの末に喧嘩別れになるというケースをこれまでに数多く見てきました。後味が悪い終わり方になってしまうことが多いのも共同経営で失敗した場合の特徴と言えるでしょう。
経営判断の遅れ
共同経営では、すべての意思決定において双方の合意が必要になることが多く、意思決定のスピードが大幅に低下します。特に飲食業界では、流行の変化が激しく、迅速な対応が求められる場面が多々あります。しかし、「相手の承認が必要だから」と判断を先延ばしにしているうちに、競争に遅れを取ることもあります。
契約の不備によるトラブル
共同経営をする際には、口約束ではなく明確な契約を結ぶことが不可欠です。しかし、事前にしっかりとした契約を結ばずに事業を始めるケースがほとんどで、後々「こんなはずではなかった」とトラブルになることも少なくありません。撤退時のルールや出資の取り扱いについて細かく決めておかなければ、経営がうまくいかなくなったときに深刻な問題へと発展します。
まとめ
共同経営には確かにメリットもありますが、その裏には数多くのリスクが潜んでいます。特に、信頼関係や経営方針のすり合わせが不十分なまま始めると、大きなトラブルに発展しやすいのが現実です。飲食店の経営はただでさえ難しいものです。共同経営を考えているなら、リスクを十分に理解し、慎重にパートナーを選ぶことが何よりも重要と言えるでしょう。
「一緒にやれば楽しい」という気持ちだけで安易に共同経営を選ぶのは非常に危険です。最終的にビジネスが破綻し、友情まで失うことにならないよう慎重に判断しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。