物件探しは、開業の明暗を分ける非常に重要な工程の一つです。
立地条件、賃料、周辺環境、設備…。一つでも物件選びの判断を誤れば、オープン前に資金が尽きてしまう、あるいは開業してもすぐに閉店を余儀なくされることさえあります。また、どれだけ素晴らしい料理やサービスを提供できたとしても物件が悪ければ、その魅力が伝わらないこともあります。
つまり、飲食店経営が上手く行くか否かは物件次第と言っても過言ではないということです。
本記事では、前編・後編に分けて物件探しのポイントについて詳しく解説しますので最後までお読みいただければ幸いです。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 飲食店開業に向けて準備・検討している方
- 開業に向けてこれから物件探しに取り組む方
- 借りる物件を決めかねている方
物件探しで大切なこと
物件探しでは以下のポイントを押さえておくことが大切です。理想の物件に出会うためにスタンスを十分に固めてから物件探しをスタートしましょう。
立地7割
立地の重要性を表す「立地7割」という言葉があります。これは、売上の7割は立地で決まるという考え方で、飲食店をはじめとする集客が求められるビジネスでは立地を誤ると、失敗する確率が必然的に高くなるということを意味しています。実際に立地の悪さが原因で閉店を余儀なくされる飲食店はあとを絶ちません。立地は物件を決めるうえで非常に重要な要素です。
創業計画書に基づき物件を探す
物件探しは十分に検討を重ねて作り上げた創業計画書に基づき行いましょう。ターゲットとする客層が訪れやすい場所であるか、店舗コンセプトを実現できるスペックであるか、競合店の存在、物件取得費、施工費、家賃などの総合的なバランスを考慮して慎重に物件を探しましょう。
予算を厳守する
工事費用が当初の見積もりを上回ることは決して珍しいことではありません。そのため、多少の追加費用が発生しても最初に決めた予算内に収まるよう余裕を持つことが大切です。また、家賃、共益費、光熱費などの月々のランニングコストもどれだけ掛かるかによって利益に大きな差が出ることになります。いずれも少しでも予算をオーバーしそうであれば、その物件を諦めるくらいの気持ちを持ちましょう。
物件はスケルトンか?居抜きか?
物件のタイプは大きく分けて「スケルトン物件」と「居抜き物件」の2つです。選択する物件によって予算、スケジュールなどに大きな影響があるため慎重な判断が求められます。
スケルトン物件とは?
スケルトン物件とは、文字通り骨組みだけの物件のことです。ブランドイメージなどにこだわりのある場合は、真っ新から好みの内装に仕上げていくことができるという魅力があります。ただし、一からお店を作り上げていくため、工事には時間が掛かり、設備投資も高額になります。また、退去時には原状回復工事を求められるため、相応の撤退コストも必要になります。
居抜き物件とは?
居抜き物件とは、前の借主が利用していた造作・設備・什器等がついた状態の物件のことです。既に出来上がっている設備を手直しするだけで済むため工事期間を短縮でき、設備投資も抑えやすいというメリットがあります。ただし、何らかの理由で閉店した物件であるということを認識しておかなければなりません。前のオーナーがどんな業態で、どれくらいの期間営業し、なぜ閉店したのかの原因を分析し、明確な打開策がなければ安直に手を出すことは避けるべきです。
近年は貸主の多くが早く次の入居者を決めたいため、居抜きでの引き渡しとなるケースが増えてきており、スケルトン物件そのものが少なくなってきています。
スケルトン物件、居抜き物件とも、それぞれメリット・デメリットがありますので自分の理想、予算に合った方を選びましょう。居抜き物件の注意点については別の記事で詳しくお伝えします。
工事施工業者は先に決める
理想は、候補物件が見つかり次第、複数の工事施工業者から相見積もりを取り、最も安い業者を選択することですが、気になる物件が見つかった際には内見、見積り、賃貸借契約まで一連のスピード感が求められます。内見では給排水・ガス・電気系統などの専門知識が必要になるため、信頼のおける工事施工業者を先に決めておきましょう。
物件探しで気を付けなければならないこと
物件探しにはたくさんの落とし穴があります。物件の契約は失敗の許されない重大な決断となるため細心の注意を払いましょう。以下は物件探しで気を付けるべきポイントです。
物件を見た目だけで判断しない
物件探しで最も多い失敗は、物件を見た目だけで判断してしまうことです。内外装などの見た目が好みで、程度も良いため、思わず一目惚れしてしまうような物件に出会ったとしても、現在は空き物件であることを忘れないようにしましょう。その物件に立地特性や設備などの問題が潜んでいても何ら不思議はありません。そうした時にこそ、なぜこの物件が空いているのか?を冷静に分析することが求められます。
物件を先に押さえるのは要注意
開業においては先に物件を押さえてから準備を開始する手法はおすすめできません。店舗コンセプト、創業計画書の作成、必要な工事など諸々がその物件ありきで進めることになるため、必然的に難易度が高くなるからです。また、結果的に家賃を多く支払わなければならないことも多いため、大切な開業資金を減らしてしまうことにもつながります。
業態によっては借りられない物件がある
理想の物件が見つかったとしても、その物件が必ず借りられるわけではありません。たとえ「飲食可」と物件情報に記載されていても焼鳥や焼肉など臭いや煙が多くでる業態は貸主から敬遠されがちです。実際はカフェなどの軽飲食のみに限られることも珍しくありません。開業する業態が営業可能であるかは早い段階で確認するようにしましょう。
物件は土地勘のあるエリアで探す
物件を探すエリアは、ゼロベースよりはある程度、土地勘のあるエリアを選択する方が無難です。客数や客層をイメージしやすいのはもちろんですが、地域の特性を把握していれば経営していくうえでの心理的な負担も軽減できます。
開業後の移転は困難
開業後、早々に立地が良くないから移転したいという理由で、金融機関へ追加融資を申し込む方もいますが、事業の実績を積んでいないため、断られるケースがほとんどです。物件探しに失敗したために売上が伸び悩み、不満を募らせつつも営業を続けるケースや借入金返済のために業績が悪くても廃業や退店への決心がつかず、赤字経営を持続してしまうケースも少なくありません。
駐車場は必須(郊外立地)
郊外に出店する場合、総客席数の2分の1程度に加え、従業員用の駐車場は絶対に必要です。駐車台数が売上げに直結すると言っても過言ではありません。近隣のコンビニやスーパーなどへの違法駐車はトラブルの原因になり、営業に支障をきたすことになります。
まとめ
今回は物件探しで大切なことや気を付けなければならないことについてお伝えしました。
物件は一度選ぶと簡単に変更することはできません。そのため物件はしっかりと練られた計画に基づき慎重に選定することが求められます。注意すべきポイントを押さえて粘り強く理想の物件を探していきましょう。
後編では物件探しのポイントについて詳しくお伝えしますので是非続けてお読みください。