飲食店の開業における物件探しのポイントとは?(後編)

物件探し

前編では、今回は物件探しで大切なことや気を付けなければならないことについてお伝えしました。後編では、契約までの流れ、物件探しのポイント、内見のポイントなどについて詳しく解説していきますので是非最後までお読みください。

この記事は以下のような人におすすめ!

  • 飲食店開業に向けて準備・検討している方
  • 開業に向けてこれから物件探しに取り組む方
  • 借りる物件を決めかねている方

契約までの流れ

賃貸借契約までの大まかな流れは以下のようになります。基本的な流れは住居の物件探しと変わりませんが、先に店舗コンセプトを固め、創業計画書を作成してから物件の条件を検討しましょう。施工業者は前もって決めておくことをおすすめします。

STEP1 物件の条件を検討する
STEP2 対象物件を探す
STEP3 物件を内見する
STEP4 申し込みをする
STEP5 入居審査を受ける
STEP6 契約手続き

物件探しのポイント

物件探しでは、店舗コンセプトと創業計画書を照らし合わせながら、出店エリアや店舗サイズといった条件を変更するなど、柔軟な対応が求められます。また、できるだけ多くの候補物件に出会うことも大事なため、多方面から物件情報を収集していきましょう。物件探しのポイントは以下の通りです。

物件情報の収集

物件情報を探すには以下のような方法があります。

  • インターネット上の物件サイト
  • 不動産会社の紹介
  • 取引を予定している業者からの紹介 等

まずはインターネット上の物件サイトで探してみることをおすすめします。ただし、飲食業界では物件数よりも出店希望者の方が多いため、良い物件はすぐに次の借り手が決まってしまいます。こまめにサイトをチェックするようにしましょう。
その一方で、物件サイトに公開されることなく、既存店の追加出店や移転先として決まってしまう物件も少なくありません。そのため、物件サイトをチェックしつつ、不動産会社をまわることが重要となってきます。不動産会社をまわる際には、いつでも連絡が取れるように希望エリアや希望家賃、連絡先を書いたメモを持参し、担当者へ渡すことを忘れないようにしましょう。
また、開業後に取引を予定している業者から物件を紹介してもらえるケースもあります。厨房機器を取り扱う企業や酒の卸売り業者などは日頃から多くの飲食店に出入りしており、現在の空き物件だけではなく、今後空く予定がある物件の情報を把握していることもあります。物件サイトのチェックと不動産会社回りで行き詰った時には次の一手として考えてみましょう。

粘り強く探す

物件探しは長期化することが往々にしてあります。なかなか物件が見つからないことにしびれを切らして、理想からかけ離れた物件を選んでしまっては本末転倒です。ある程度時間がかかることを想定して、粘り強く物件を探しましょう。

妥協点を決める

最も人気のある物件は、人の往来が多い道路に面した家賃が安い1階の居抜き物件です。ただ、そういった物件に出会えることは滅多にありません。多くの場合、家賃と人の往来は比例するため、集客しやすい優良物件は家賃が高くても入居希望者が絶えることはありません。
理想ばかりを追い求めていては、いつまでたっても物件は決められません。そのため、絶対に譲れないポイント、妥協しても良いポイントを予め想定しておくことも必要です。

内見のポイント

気になる物件が見つかった時には迷わず、仲介する不動産会社へ内見を申し込みましょう。
内見する際には、立地と物件のスペックをしっかりと確認する必要があります。限られた時間の中でも情報の抜け漏れがないよう、内見時のチェックポイントを事前に押さえておきましょう。

内見前に準備しておくこと

  • 店舗の内外装やターゲットとする客層など、出店する際のイメージをしっかり固めておきましょう。
  • 給排水・ガス・電気系統などの専門知識が必要になるため、可能な限り工事施工業者に同行してもらうようにしましょう。
  • 筆記用具、スマートフォン(カメラ)、懐中電灯、メジャーなどを忘れずに持参しましょう。

内見時のチェックポイント

以下は内見時にチェックするポイントの一例です。確認漏れを防ぐため事前に、チェック項目をリストにして持参しましょう。(内容は居抜き物件の内見を想定したものです。)

①周辺環境 □商圏人口 □最寄り駅からの距離 □最寄り駅の乗降者数 □店前通行量 □競合店 □周辺施設 □駐車場
②外観 □視認性 □間口の広さ □看板の設置場所・スペース □室外機
③内装・フロア □レイアウト(ホール面積と厨房面積の比率) □動線 □席数 □照明 □空調 □トイレ
④インフラ □電力・動力 □ガス □水道・排水
⑤厨房設備 □厨房機器(型番・型式) □ダクト □グリストラップ □厨房防水
⑥確認事項 □リース機器の有無・契約内容 □トラブル歴 □禁止事項 □賃貸条件 □引き渡し時期
  • 厨房機器、空調など故障の恐れがあるものは型番や型式を記録するなど念入りに確認しましょう。
  • ①周辺環境は「競合店調査のポイント」にて詳しく解説していますので合わせてお読みください。

内見後の流れ

内見後、納得できる物件であれば以下の流れで手続きを進めることになります。順番は前後する場合もありますが競争率の高い物件ほど手続きにはスピード感が求められます。

STEP1 物件内見
STEP2 工事見積り
STEP3 物件申込
STEP4 入居審査
STEP5 資金調達
STEP6 正式契約
STEP7 物件取得費用の支払い
STEP8 物件引き渡し

ポイントは保証金や敷金といった物件取得費用の支払いを資金調達後に行うようにすることです。出店エリアが都市部となれば物件取得費用も高額となり、資金調達の目途が立たなければ契約には移れません。不動産会社には事前に正式な契約は資金調達後になることを伝えましょう。その場合は、手付金(賃料の1ヵ月分が目安)を先に支払うケースが多くなり、万が一融資が否決された場合でも手付金を放棄すれば申し込みを解除できるようになります。貸主によっては手付金なしで物件を押さえられることもありますので賃貸条件を確認したうえで交渉してみましょう。

まとめ

今回は前編・後編にわたって物件探しのポイントについてお伝えしました。飲食店の開業において物件探しがいかに重要で、どこに注意しなければならないのかが伝われば幸いです。
私はこれまでに多くの飲食店の開業に関わってきましたが、選択した物件が開業後の明暗を分けたことも少なくありません。メディアでは都会から遠く離れた田舎でも行列が絶えない繁盛店や、誰からも気づかないような路地裏でひっそりと営業している隠れ家的な繁盛店が取り上げられることがありますが、そういった成功例はほんの一握りです。シンプルにターゲットとする顧客に来店してもらいやすい場所に魅力的なお店を構えた方が成功の可能性は高いことは間違いありません。
物件探しは店舗コンセプト、創業計画書あってのものであることを意識して、理想とする物件に出会えるよう粘り強く探していきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。