飲食店を開業する際には、店舗の大小に関わらず、様々な届出や手続きが必要になります。届出や手続きを忘れていたり、内容に不備があった場合は、予定どおり開業できなくなる恐れがあるため注意が必要です。
本記事では、前編・後編に分けて開業に必要な届出や手続きについて解説していきますので是非最後までお読みください。
本記事で紹介する情報は2025年7月時点のものです。最新の情報は届出や手続きを行う機関にてご確認ください。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 飲食店開業に向けて準備・検討している方
- 飲食店開業にどのような手続きが必要か分からない方
- 飲食店開業に向けてどこで手続きすればいいのか分からない方
飲食店の開業に必要な届出や手続きの一覧
飲食店の開業に必要な届出や手続きには、様々なものがあります。個人事業主として開業する場合の主な手続きは以下の通りです。
名称 | 届出先 | 対象 | 期限 |
飲食店営業許可申請 | 保健所 | 全ての店舗 | 開業1ヵ月前が目安(事前相談を含む) |
個人事業の開業・廃業等届出書 | 税務署 | 全ての店舗 | 開業後1ヵ月以内 |
所得税の青色申告承認申請書 | 税務署 | 青色申告を行う場合 | 開業後2ヵ月以内(青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで) |
給与支払事務所等の開設届 | 税務署 | 従業員を雇用する場合 | 従業員を雇用する事業所の開設日から1ヶ月以内 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 税務署 | 給与や税理士報酬等に関する源泉税の納付を年2回払いにする場合(原則は毎月支払い) | 適用を受ける時 |
青色事業専従者給与に関する届出書 | 税務署 | 事業を手伝う家族従業員(青色事業専従者)へ給与を支払う場合 | 開業後2ヵ月以内 給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以降開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合には、その日から2ヵ月以内) |
防火対象物使用開始届 | 消防署 | 建物や建物の一部を新たに使用し始める場合 | 建物の使用開始7日前まで |
防火対象物工事等計画届出書 | 消防署 | 開業の準備段階で対象物件において一定以上の工事や改修を行う場合 | 工事を開始する7日前まで |
火を使用する設備等の設置届 | 消防署 | 調理などで火を使用する設備を導入する場合 | 管轄する消防署へ確認 |
防火管理者選任届 | 消防署 | 建物全体の収容人員が30名以上の店舗の場合 | 営業開始まで |
深夜酒類提供飲食店提供届 | 警察署 | 深夜12時以降にアルコールを提供する場合 | 営業開始の10日前まで |
労災保険の加入手続き | 労働基準監督署 | 従業員を雇用する場合 | 雇用日の翌日から10日以内 |
雇用保険の加入手続き | ハローワーク | 1週間の労働時間が20時間以上で31日以上継続して雇用する従業員がいる場合 | 雇用日の翌日から10日以内 |
税務署の手続きは住民票の居住地を管轄する税務署または、店舗所在地を管轄する税務署の何れかで行うことができます。(法人の場合は本社所在地)
保健所への届出
「飲食店営業許可」は、営業を開始する際に必ず管轄の保健所で取得しなければならない許可です。許可を取得することで、店舗が食品衛生法に基づき、安全で衛生的な食品を提供できると認められます。許可を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 食品衛生責任者の設置:店舗ごとに1名以上の食品衛生責任者を配置し、食品の衛生管理を担当させる必要があります。(食品衛生責任者の資格を取得するには、自治体が開催している食品衛生責任者養成講習会を受講する必要があります。ただし、栄養士や調理師などの有資格者は、講習を受けずに食品衛生責任者になることが可能です。)
- 施設の基準適合:厨房や客席などの施設が、保健所の定める衛生基準を満たしていることが求められます。
- 防火管理者の選任:収容人数が30名以上の店舗では、防火管理者を選任し、消防計画を作成・提出する必要があります。
飲食店営業許可取得手続きの流れ
①事前相談:保健所へ店舗の設計図や設備計画を持参し、相談します。
②営業許可申請:必要書類を揃えて、保健所へ申請を行います。
③施設検査:保健所の担当者が現地を訪れ、施設が基準を満たしているか検査します。
④営業許可証の交付:検査に合格すれば、営業許可証が交付されます。
⑤営業開始:営業許可証を受け取り、営業を開始できます。
営業許可証を取得するまでの期間は、2~3週間程度が目安とされていますが、不備等があった場合は許可証の発行に時間がかかるため、事前相談を含めると開業の1ヵ月前、もしくは店舗工事の着工前に手続きへ着手することをおすすめします。
飲食店営業許可の申請料金
飲食店営業許可を取得するには申請料金が必要です。申請料金は飲食店の営業形態や、地域、保健所によって異なりますが、だいたい16,000円~19,000円です。
その他の許可申請
販売方法によっては飲食店営業許可とは別に許可申請が必要なものもあります。届出を行わなければならないものがないか、まずは管轄の保健所へ相談しましょう。以下は、店内で提供する場合は飲食店営業許可のみで問題ありませんが、テイクアウト用に販売するには別途許可が必要です。
- 菓子類:菓子製造業許可
- 食肉製品:食肉製品製造業許可
- アイスクリーム:アイスクリーム類製造業許可
- 乳製品:乳製品製造業許可 など
まとめ
今回は飲食店の開業に必要な届出や手続きに関する情報と保健所への届出についてお伝えしました。
後編では税務署や消防署などへの届出や手続きについて詳しくお伝えしますので是非続けてお読みください。