私がこれまでに受けてきた多くの開業相談のうち、その半数以上が飲食店の開業に関する相談でした。その内容はいつか自分のお店を持ちたいため、これから経営を学びたいというものから具体的に開業の準備を進めており、金融機関から融資を受けたいというものまで様々でしたが、何れも相談者の人生を左右する大きなチャレンジとなるため、常に慎重な対応を心掛けてきました。私もそこから多くを学び、飲食店経営の難しさを知りました。これから公開していく情報が少しでも多くの飲食店の開業を目指されている方のもとへ届き、思い悩んだ時の道標(みちしるべ)になれば幸いです。
この記事は以下のような人におすすめ!
- 飲食店開業に向けて準備・検討している方
- 飲食店開業に不安がある方
- 飲食業界に関する情報が不足していると感じている方
総務省統計局が公開している経済センサスによると飲食店は全国で約50万店以上が営業しているとされており、年間6~8万店程度が開業しているものの、廃業もそれに匹敵するほど多いと言われています。
そして飲食業は開業から1年以内の廃業率は40%、3年で70%、5年で80%、10年で90%以上と言われるほど生き残るのが難しい業種です。
では、なぜ飲食業の開業率・廃業率は高いのか?その理由について解説していきたいと思います。
意外と低い?飲食店開業までのハードル
飲食業は他の業種と比べて一定の経験値があり、資金面さえクリアできれば、容易に開業できてしまうこともあり、いつか自分のお店を持ちたいと考えた時に比較的独立しやすい業種と言えます。
勘違いされやすいのですが飲食店を開く際に調理士免許は不要です。保健所で1日の衛生責任者講習会を受ければ必要な許認可が簡単に取れるため誰でも開業できてしまうという敷居の低さ、門戸の広さが飲食店の魅力でもあります。
また、小規模のお店であればやり方によって比較的少額の資金でも始められます。近年ではフランチャイズ形式での開業も増えており、既存のブランド力やノウハウを活用することで飲食未経験者でも比較的安心して開業できる環境が整っています。
なぜ飲食店の廃業率が高い?その理由は…
新規参入が後を絶たない飲食業界ですが、1年以内の廃業率は40%以上(大都市圏では50%以上)とも言われています。その背景にある主な理由は以下の6つです。
競争の激しさ
飲食業界は新規に参入しやすいため、常に競合店となる新しいお店がオープンします。特に大都市圏では、多くの飲食店がひしめき合い、顧客を獲得するための競争が必然的に激しくなることから集客が難しくなり、売上が伸び悩むお店も少なくありません。
固定費の負担
飲食店経営には、仕入れなどに加えて家賃や光熱費、従業員の給与などの固定費が多くかかります。特に大都市圏では家賃が高く、一定の売上を維持しなければすぐに経営が立ち行かなくなります。売上が不安定な時期に予想以上の固定費がかさんでしまった場合、早期に資金が不足して廃業に至るケースもあります。
経営ノウハウの不足
飲食店は「おいしい料理を提供する」だけでは成功が難しく、マーケティング、コスト管理、サービス提供、リピーター獲得など、さまざまな経営スキルが求められます。特に個人経営のお店の場合、これらのノウハウが不足していることが原因で廃業に至るケースもあります。
景気や経済など外部要因の影響
消費者の外食需要は、景気の影響を強く受けます。不景気や消費税の増税などにより、外食を控える消費者が増えると業界全体の売上が減少し、廃業を余儀なくされるケースもあります。
また、新型コロナウイルス感染症が流行した際に飲食店はこれまでにない深刻な打撃を受けました。感染対策として時短営業や休業を余儀なくされたことで多くのお店が廃業を余儀なくされました。
労働力不足
飲食業界では慢性的な人手不足が深刻な問題となっています。特に若い人材の確保が難しく、労働条件の厳しさや長時間労働の印象が強く敬遠されがちです。そのためスタッフの確保が難しくなり、運営に行き詰まるケースもあります。
トレンドの変化
飲食業界はトレンドの変化が激しく、短期間で流行りが変わることがあります。新しいトレンドに対応できず時代遅れと見なされるお店は、集客力が落ち、廃業に追い込まれるケースもあります。
まとめ
今回は飲食店の開業率・廃業率がなぜ高いのか?についてお伝えしました。思ったよりも飲食店の開業が簡単であること、その分、様々な理由から廃業のリスクも高いことが伝われば幸いです。
近年、飲食店を取り巻く経営環境は、原材料費に加え、人件費や光熱費の高騰などが重なり、その過酷さを増しているため、開業を目指すうえで事前の綿密な準備が欠かせません。飲食店開業に向けてスタートを切る際には、様々なリスクがあることを想定し、適切な戦略を立てることが重要になってきます。無謀な挑戦とならないよう、しっかりと準備をしていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。