飲食店の開業における資金調達のポイントとは?(後編)

開業資金

前編では、資金調達の方法や融資を受けるまでの流れなどについてお伝えしました。後編では、融資の面談を受ける際のポイントや融資に関するよくある質問について詳しく解説していきますので是非最後までお読みください。

この記事は以下のような人におすすめ!

  • 飲食店開業に向けて準備・検討している方
  • これから融資を受けようとしている方
  • 融資について詳しく知りたい方

面談のポイント

面談の多くは日本政策金融公庫(以下:日本公庫)の各支店や各地の商工会議所、商工会などにおいて対面で行われます。以下のポイントに注意して面談に挑みましょう。面談の時間は平均30分~40分程度です。

  • 面談当日に持参しなければならない書類は日本公庫から届く郵送物に記載されています。漏れのないように準備して必ず持参しましょう。具体的には身分証明書、預金通帳(自己資金を確認するため)、ローンの返済計画表(借入がある場合)などです。それ以外にも事業内容やご自身の経歴をアピールできる資料があれば持参しましょう。
  • 面談では経営者としての意識が問われます。身だしなみを整え、清潔感のある服装で挑みましょう。服装は人柄を印象付ける要因になります。
  • 代理人による面談は認められません。また、アドバイザーなどの立場で第三者が同席することは、経営者としての資質の欠ける印象を与えかねないため避けた方が良いでしょう。
  • 面談では主に創業計画書の内容についての質問があります。自分用の手元資料として創業計画書の控えを必ず持参しましょう。計画書に記載した内容をしっかり頭に入れて、質問に答えられるように準備しておくことが大切です。想定される質問は次項を参考にしてください。
  • 多くの融資担当者は、出来るだけ申込者の希望に沿えるよう最善を尽くしています。たとえ面談が思うように進まなくても威圧的な態度をとることは厳禁です。理由はどうあれ、口論などをしてしまうと審査で落とされることもあります。

面談時に想定される質問内容

面談では事前に質問を予測しておくことが、最も効果的な対策です。面談時に多く質問される代表的な質問内容をまとめてみましたので参考にしてください。
面談の担当を務める日本公庫の職員は経営に関する知識が豊富です。胸を借りるような気持ちでリラックスして面接に挑みましょう。面談の時間は限られています。聞かれたことについてだけ、明確に回答するというのが鉄則です。

創業の動機について なぜお店を始めようと決意したのか、そのためにどんな準備をしてきたかなどを中心に説明しましょう。
創業動機は「お金儲けのため」という答えも間違っていませんが、「飲食店経営を通じて地域を豊かにする」などの誰もが共感できる理念を掲げた方が印象は良くなるでしょう。
略歴について 飲食業界での実務経験は、審査結果に大きく影響します。過去、現在の勤め先における担当業務、経験、ノウハウ、人脈などについてアピールすると良いでしょう。
飲食業界での経験が浅い方は融資を断られることもあります。少なくとも3~5年の実務経験は必要と考えましょう。
営業場所はどこか? 事前に提出する物件取得費の見積書以外に場所が分かる地図のコピー、間取図、物件の写真などを用意しておくと説明もしやすく好印象でしょう。
なぜ、この場所を選んだのか?を質問される可能性は高いです。その根拠となる立地の特性や競合店の存在などにより、出店するエリアにニーズがあることを説明しましょう。
主力商品は何か?お店のセールスポイントは? 主力商品やサービスの特徴の他、商品単価、全体の売上げに占める割合などについても答えられるようにしておきましょう。また、競合店との差別化を示す、自店ならではのこだわりなども説明しましょう。
見込んでいる客層は? 集客したいと考えている主な客層の具体的な特徴を答えられるようにしておきましょう。「サラリーマン」などの漠然としたものではなく、年齢層、性別、趣向などを説明できると説得力が増すでしょう。
どのように集客するのか? 集客に直結する取り組みとして「地元メディア〇〇に取材を依頼する」「近隣の企業や住宅にチラシのポスティングを行う」「SNSにより認知度向上を図る」などを具体的に説明できるようにしておきましょう。
競合店の状況は? 少なくとも近隣の競合店に関する情報(メニュー構成、客層、客単価など)は把握しておくべきです。競合店調査を実施していればその結果を説明しましょう。調査結果をまとめた資料などがあれば準備しておきましょう。
融資希望額と資金使途は? 融資希望額は計画に対して過大と判断されると減額になる可能性が高くなります。具体的に設備資金として〇〇万円、運転資金として〇〇万円など、その内訳と必要な根拠を明確に答えられるようにしておくことが大切です。
なお、個人事業主の融資額の目安は、自己資金の3倍程度、最大で1,000万円程度と考えておきましょう。
自己資金はいくらか? 融資担当者へ持参した預金通帳を見せて、どれくらいの期間、どのようにして貯めてきたかを説明しましょう。地道にコツコツと貯めてきたことが伝われば計画性が高いという評価につながるでしょう。
売上高や利益はどの程度を見込んでいるか? 創業計画書に基づき売上高や原価率などの根拠について説明しましょう。計画は借入金が返済できる堅実な内容であることが求められます。全ての数値に根拠があり、実現可能であることを説明できるようにしておきましょう。詳細な数値計画の資料があれば持参し、説明に利用しましょう。
また、利益目標を達成するために商工会議所などの専門家相談窓口を定期的に利用するなど、専門家からのアドバイスを積極的に受け入れるスタンスであるといった説明もプラス材料になるでしょう。
人手は確保できるか?人件費の見通しは? 慢性的な人手不足と人件費の高騰は飲食業界における大きな課題のため、その対策を問われることも考えられます。
求人誌に依存しない人手の確保の方法や人件費削減に向けた業務効率化の具体的な対策を検討していることを説明できるようにしておきましょう。
もし、計画通りにいかず、返済ができなくなったらどうするつもりか? かなり厳しい質問ですが、実際に聞かれた方もいますので以下のような回答を想定しておきましょう。
・早期に専門家へ相談し、原因を分析のうえ対応策を検討する
・集客方法を見直す
・人件費などのコスト削減を検討する

審査では、創業計画書の内容だけなく、面談の結果も重視されます。面談での質問は、基本的に創業計画書に記載されている内容とほぼ同じですが、その分、しっかり理解できていることが求められます。何を聞かれてもある程度は答えられるようにしておきましょう。

融資の申し込みでよくある質問

どこの支店に申し込みをしたらいいですか?

日本公庫の場合、管轄するエリアは決まっています。法人の場合は本店所在地、個人事業主の場合は、開業するエリアを管轄する支店へ融資の相談及び申し込みをしてください。

否決や減額になることはありますか?

税金の未納や滞納がある、消費者金融から多額の借入がある、過去のローンやクレジットカードなど支払いが滞っており、信用情報に問題があるなどに加え、などに加え、飲食業界での経験が3年に満たない、自己資金が少ない、創業計画書の内容に実現性がない、面接時の態度が悪いなどの理由で否決や減額になる可能性があります。

タンス預金は自己資金と認められますか?

タンス預金は、本人のものであることが証明出来ないため、たとえコツコツと貯めてきていたとしても、自己資金として認められません。必ず預金通帳に貯めていくようにしましょう。

いくらから借りられますか?

融資額は一般的に10万円単位と言われています。自己資金に対して借入希望額が少額の場合は、融資担当者から融資額を増やすよう提案されることもあります。飲食店開業には想像以上の費用がかかるため、借りられる場合は、少しでも多く借りておくことをおすすめします。

借りたお金が足りなくなった場合、追加融資してもらえますか?

計画性がないと判断され、融資を断られる可能性が高いです。借入希望額は慎重に検討しましょう。

返済期間を短くすることはできますか?

借入金の返済をできるだけ短期間で終えたいと考える方も多いですが、短期で返済を行うとその分、毎月の返済負担も大きくなり、資金繰りの悪化にも繋がります。創業時は出来るだけ長い期間で返済していくことをおすすめします。

借りた資金の使い方を変えても大丈夫ですか?

設備投資の名目で借りた資金は必ず設備投資に使う必要があります。設備投資の名目で借りているにも関わらず、運転資金に使ったことが発覚した場合は、重大な資金使途違反として今後の融資が受けられなくなるなどのペナルティが課されることがあります。もし設備投資が当初の予定よりも少額で収まった場合は、どうすればいいのか日本公庫に問い合わせてみることをおすすめします。逆に運転資金名目で借りた資金を設備資金に回すことに関しては問題ありません。

まとめ

今回は前編・後編にわたって資金調達のポイントについてお伝えしました。飲食店開業において大半の方が利用する融資について具体的なイメージが伝われば幸いです。
融資を受けるためには、飲食業界で経験を積むこと、自己資金を少しで多く貯めること、具体性のある創業計画書を作ること、面談を無事にクリアすることが必須です。現時点で何れかが自分に欠けていると思った方は余裕をもった準備期間を設けて、チャレンジしましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。